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フィジカルマネジメント研究会「たくみの会」発足ショートストーリー

合気道を始める

22歳の時、合気道で達人になりたい、そして独立したいという目標を立て、
師範の教えを忠実に守り、サラリーマンと合気道の両立で練習に明け暮れる毎日。

支部道場を3箇所任され、本部での練習と合わせて週5日の合気道。
自宅にも練習場所を確保して帰ってからもトレーニング。

筋トレも必要と思い、購入した本の通りの器具を自宅に揃え毎日実行し、
1年間で10kgの体重増に成功。

さらに、柔道も役立つのではないかと週5日間の合気道に加えて、
1年間だけ近くの武道館で柔道稽古。

でも、特に強くなった、これなら人を制することができる、という実感もないまま、
道場生の仲間の中には「これは健康体操と割り切ればいい」という人も出てくる。
いやいやそれでは自分は納得が行かない。
でもこのカリキュラムをこなしていても達人への道が見えてこない。

そうかここには達人カリキュラムがないんだ。じゃあ、自分で作るしかない。
と、練習開始15年目のある日、一大決心をしました。

時は1993年、36歳の時でした。

 

ある仮説が生んだ奇跡

そしてついにある仮説を立てることができ、
何と一回の検証(試技)で人が後ろに吹っ飛んだのです。

こんなことが自分にできるなんて。
一生無理かと思っていた動きがこんなに簡単にできるなんて。

自分はもちろん、相手をしてくれた人も放心状態でした。
奇跡が起こったかのような出来事でした。

時は1993年10月。
いつもの合気道道場の指導が終了した後、
一般部の道場生に一人残ってもらってこっそり試した時の出来事でした。

その「一回の試技」に入る前に「ちょっと試したいことがあるんだ」と
いつもの雰囲気ではない感じでお願いをしたのですが、
ちょっとこちらが動かそうとすると、
その人はいつもの習慣(?)でつい自ら倒れるモードに入ろうとするのです。

そこで、

「これでは駄目です。今日はいつもと違う感じでよろしくお願いします。
  私がこれからあなたを動かそうとしますが、絶対に自分から動いてはいけません。
  これは実験です。お願いですから動かないで。動くと破門ですよ」

と念押しして臨んだ「一回の試技」でした。
自分が動き、スローモーションのように相手が飛んでいく感じをよく覚えています。
あまりにも驚いたのでその日はその一回のみで感動に浸っていました。
その一回で何かが壊れ、そして何かが生まれたのです。

その瞬間、ある言葉が頭の中をよぎりました。
不思議なのですが頭の上空を横に流れるテロップのようによぎったのです。
もちろん自分の言葉ですが、15年の練習の日々がその言葉を生んだのだと思います。

「何かを成し遂げるためにはある道筋を通ればいい。
 その道筋を探す努力をまずすればいいんだ。
 人の能力は実は無限であり、自分はここまでか、とあきらめる必要はない。
 その能力を引き出せばいいだけのことだ。
 悩むことはない」

自分に起きた現象は奇跡なんかではなく
確かに自らが起こした現象であったと体感覚として確信したのです。
これが人間として普通であると確信したのです。

私はこの日からまったく別の人生を歩んでいます。
楽しみながら、目的を持ちながら、自分が決めた自分の道を歩んでいます。
何かを成し遂げるための「仮説」を立ててそれを「検証」する、これが大変楽しいのです。

 

大転換

あの「一回の試技」が成功したのを契機に(記憶ではその日から)
人生観、価値観、人間観、仕事観等が見事に激変し、
頭の中にうずまいていた騒音のような悩みの連続がその日から嘘のように消えて
頭の中にさわやかな風が吹き、言わば「頭が暇」になりました。

またその「一回の試技」の感触の記憶を手がかりに、
「人間の体には自分の知らない多くの何かがある」という一念で
あらゆる時間を使って研究を深め自分なりのトレーニングに励みました。
この時にはまだ合気道との両立でした。

すると2ヶ月くらい立ったその年の12月に体に異変が起きたのです。
会社帰りの何気ないいつもの運転中の車の中。
ハンドルを握る右手がハンドルから滑り落ちてストンッとシート横に落ちたのです。

「あっ、病気だ」

とすぐに思いました。なぜなら「あっ、右手が動かない」のです。

数十秒なのか数分なのか大変心配な時間が過ぎました。
車を運転中のことです。

前方への注意をしたまま、体の中に目を走らせ、
右手が動くかどうか試そうと思いましたが、どうしても動かないのです。
ダラリと下がったまま右手がまるで自分の意思を持ったかのように
ぶらぶらしているのです。えーっ、これって何?

でもゆっくりと思考をめぐらせました。
「待てよ、ひょっとしていつもと同じ感じで動かそうとしているからではないか?」
と仮説を立て、いつもと違う動き、つまりは「腕全体を上方に這わせるように」を
試しました。

するとズルズルと腕が上がって来たのです。
やったー、と思い、途中まで挙げた「一本の右手」の肘から先を今度は動かし
ハンドルに乗っけてみました。

「あっ、元に戻った」

病気じゃなかったんだ。と安堵しました。

「ひょっとして力が抜け切った腕はこうなるのか?」

と考え、試しに今度は「抜く」ための自分の内側感覚を探りながら、
ハンドルにかけている右手の筋肉を意識的に抜いてみると、やはりストンッ。

もう一度、落ちた右手をずり上がらせてハンドルに乗っける。

「これっ、おもしろい!」

じゃあ、ずっと握ったままの左手はどうなんだ?
と左手の緊張を意識的に抜いてみる。
やはり、ストンッ。

この日から体が大転換しました。
運転に限らず疲れることが無くなりました。
どのような場面でも大変楽な姿勢を常に保つことができるようになりました。

さらにどうやったらもっと体を緩めることが出来るのか?
どうやったらもっと相手にやさしく接触しながら動けるのか?
それは外観的なものよりも内観的なものからのアプローチがいいのではないか?
などと考え、筋肉だけでなく循環器系のアプローチもこの頃から研究に加えていきました。
長年の苦しみであった腰痛を自分で克服出来たのもこれらの研究のおかげです。

人間の能力を引き出すにはまず「究極の緩み」が必要。
これは実体験で確実に言えることです。
でも「緩んでいないと何もできない」という仮説よりも

「健やかに気持ち良い『動き』を実現した時にはある程度緩んできて
  さらにそこに緩める体操等があればもっと『動き』が良くなりさらに緩みが深まる」

という仮説(双方向シナジー)を実感しています。

 

たくみの会発足

私自身が体験したことを少しでも多くの人に伝えたい。
そのためにこの研究を深めていきたい。
もはや合気道の研究ではない。人間の可能性の研究だ。と直感しました。

自分の能力は無限であると心底信じられる体験をして頂き、
自分の可能性に確信を持ち、
そこから何をするのかしないのかの選択肢があることが何よりも嬉しい。
それを感じて頂きたい。

そして研究を深めるために、あれほど情熱を傾けていた合気道から離れ、
「たくみの会」を設立しました。

「たくみの会」の命名はあの「一回の試技」から半年程経った1994年春ですが、
研究開始は1993年10月からですので、設立年は1993年としています。

当初のたくみの会は道場形式で行っていましたが、現在では研修スタイルです。

演習の題材として当初は、合気道、古武術、武道等の動きを多く用いていましたが、
徐々に介護、スポーツ、生活動作へと動き全般に広げて行き、
今では「動きを通して人間の可能性を探求」というスタイルになっています。

その活動の中でいままで不可能と思っていた動きがどんどん実現していっています。
そしていつも練習は楽しく笑いの中で行っています。

 

フィジカルマネジメント研究会「たくみの会」

フィジカルマネジメント研究という名前に付いている「フィジカル」は
「身体」と訳される事が普通ですが、たくみの会では、
その「身体」と「心」を一体として考える「心身一元論」を採用していますので
心身(身心がいいですね)が「フィジカル」で、さらに思考(脳)も入ります。
フィジカルマネジメント研究という意味を「人間研究」という意味に使っています。

 

フィジカルの変化

事実、自分のみでなく参加者の体験や実感として、
「体(からだ)」が究極的に緩んだり、今までに出来ない動きが実現した瞬間に
「心のもちよう」や「頭の働き」が格段に変化しています。

例えば、
うまく行かない時、うまく行かないなあ、と思った次の瞬間、
うまく行かせるためには何が必要か? 何をすればいいのか?
を考える習慣。
どうしてうまく行かないんだ、と悩むことがもう無くなり、
常に「次の一歩」「次の楽しみ」を考える毎日。

例えば、
トレーニングにより体が緩むにつれて5感の鋭さが増してくる。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚はもちろんのこと、最後5番目の「触覚」?
いや5番目は「身体感覚」です。
それを英語で言えばフィジカルセンスです。フィジカルセンスは「触覚」を含んで、
筋肉の緊張と弛緩の感覚、重心感覚、機能感覚等です。

 

マネジメントの意味

「マネジメント」は「統括する」「管理する」という意味よりも広い意味で
「その魅力を最大限に引き出し目的を達成する」という使い方をしています。
よって、フィジカルマネジメントとはフィジカルの魅力を最大限に引き出す、となります。
その向かう目的はもちろん個人個人さまざまとなるでしょう。

 

※たくみの会 は登録商標です。

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