「武術を通して・・・」が目指す感覚
(たくみの会Facebook 2013.08.15投稿より原文のまま引用)

たくみの会セミナーにおいて、
「武術を通して・・・」という表現を用いる。

オープンセミナーに限らず武術的な動きを
演習の題材に用いることは多い。

つまり「武術を通して学ぶ」ことが趣旨であるので
もちろん「武術の学び」ではない。
あくまで「武術的動作を題材にした演習」である。

では、武術を学んでいないなら
いったい何を学んでいるのか?

それは相手とのコミュニケーションであり
それを例えで言えば「そよ風感覚」である。

演習の中で、
相手がこちらの手を取ってくる。
相手を動かそうと思っても動かない(という相手の協力)。

こちらが相手を押そうとする。
相手ががんばっているのでびくともしない(という協力)。

こちらはすこやかにコミュニケーションしたいのに
中々難しい、という状態を演習で作ってもらう。

こういう時、一般的な武術イメージは、
相手の力を見事にスルッとはずしたり
相手の力を思いがけない方向へと誘導したり、
ではないだろうか?

しかし一般的な素人の対応は、
相手の力に見事に真正面から力で対抗したり、
相手の力を違う方向に誘導しようとして
結果新たに抵抗されたり、ではないだろうか?

つまり相手の力を「プレッシャー(圧力)」と
感じたままの対応ではないだろうか?

これを「そよ風が吹いてきた」と感じる感覚として
「武術を通して」学ぶのである。

しかし、相手の力をはずしたりせず、
違う方向に導いたりもせず、
そのまま受け入れるのである。
相手のそのままを認めるのである。

ここで突然ですが、想像してみてください。
あなたが散歩しているとする。
少し汗ばんだころ、ふっと横から
頬を撫でる「そよ風」が吹いてくる。

「おっ、きやがったな!」とはならない。
「ああ、いい風だなあ」と立ち止まるだろう。
しばしその風を頬だけでなく腕で全身で
感じているだろう。

その「そよ風感覚」で
相手とのコミュニケーションのありようを成すのである。
相手の力が、がんばりが、「そよ風」のように
感じられる感覚を目指すのである。
もちろん、こちらの返す力も「そよ風」である。

そしてここで言う「相手」とは「人」だけでなく
「地面(地球)」を始めとして
「床」「壁」「道具」「物」など、
触れ合うものすべてを対象とするのである。
そしてそれが接触であっても非接触であっても。

この「そよ風感覚」をベースにして、
武術を志す、音楽を志す、ダンスを志す、
営業を志す、マネジメントを志す、
すこやかな人間関係を志す、スポーツを志す・・・。

人それぞれの志にお役に立てるよう
「武術を通して・・・」考えている。

 

                             2013年8月15日
                          たくみの会代表 白神康信
                           (白神アソシエイツ代表)